FAKE‐LAKE

「教授って人がお前の事助けてくれたんだ。お前左腕何発も撃たれてて。時間が経ってたせいか壊死してたから切断するしか無かったって」
 ここはリアレスクの宿屋で教授が泊まっている場所だとニールは付け加えた。
 撃たれたのは夢じゃなかったんだ。と言うことは……。
 アンジェは無理に起き上がり、自由のきく右手でニールにしがみついた。
「ニール、レイ……レイは?」
 途端にニールの顔が暗くなる。嫌な予感がした。
「ねぇ教えて。レイはどうなったの」
 しつこく何度も尋ねるとニールの目から涙がこぼれだした。
「まさか……」
 ニールが口にするだろう言葉を予測して、アンジェは息を飲む。
「駄目だった……って」
 ニールは話しながら泣いた。
「教授さんが戻った時にはもう立入禁止になってて……聞いた話ではあちこちに血痕があって……依頼人の兄ちゃんもレイも……」
 そしてシアナも帰って来なかった。ニールは唇を噛んで俯く。
「依頼人も……レイ、も……?」
 確認するように問い掛けた後、アンジェは突然ベッドから飛び降りた。
「おい、どこ行く気だ!」
「基地に行く。止めないで」
 ニールはアンジェを捕まえ、怪我人とは思えないくらいの力でもがく彼を全力で止めた。
「行ってどうする? もうレイはいないんだ」
「嘘だ!」
 嘘だ。信じない。
 アンジェの目にじわりと涙が浮かんだ。ニールは震えるアンジェをしっかり掴んだまま呻くように繰り返した。
「レイは、死んだんだ。レイは、死んじまったんだよ……」
 お願い、誰か嘘だと言って。死んだなんて。死んでしまったなんて。レイが。弟が……!
 アンジェは力無く床に座り込んだ。傷が開いたのか、左肩の包帯に血が滲んだ。
「レイ……」
 嗚咽を堪えようとする細い声が、張り詰めた空気を震わせる。
 助けてあげられなかった。あの時目の前に、すぐそばにいたのに。あの時、すぐに博士を撃っていれば――
「……殺して」
 アンジェは苦しそうに呻いた。