FAKE‐LAKE

 乱暴な口調。温かさを感じない眼差し。目の前にいるシアナは以前の――ニールが知っている彼とは全然違う。
 でもその表情は真剣だった。ニールはじっとシアナを見つめる。
 そうだ。信じよう。そう決めたじゃないか。
「見とれてないで、早くアンジェを連れ出すぞ」
「誰が見とれ」
 不意にシアナはニールの口を抑えた。
 彼は窓の外を見ている。ロスタナの兵らしき影が二人、近づいて来ていた。
「奴らだ」
 ニールはシアナの腕を掴んで二階に上がった。アンジェはどこにもいない。多分湖に出掛けてるんだ。
 外へ逃げる余裕が無かったので、急いで屋根裏部屋に隠れた。部屋はレイが使っていた時のままだった。
 しばらくして階下にいかつい声が響く。
「いないようだな」
「普段森の中をちょろちょろしてるそうですから」
「しかし見張りはどうしたんだ。どこにもいないじゃないか」
「確かに」
 シアナとニールは顔を見合わせた。見張りがいない?
「ったく、肝心な時に役に立たない奴らだ」
「どうしますか」
「多分坊主をつけてるんだろう。とりあえず近くを捜す」
「わかりました」
 そっと屋根裏から下りたシアナは、外に出た二人が湖の方へ向かうのを確認する。
 ふと、テーブルに置いてあるスケッチブックから薄水色の紙がはみ出ているのに気づき、ためらいなく引き出して目を通した。
「ニール」
 シアナは辺りをキョロキョロしながら下りてきたニールにそれを手渡した。
「アンジェからお前にメッセージだ」
 引ったくるように受け取り、ニールは食い入るように綺麗な文字を目でなぞった。