FAKE‐LAKE

「お前さえ、お前さえ素直に言うことを聞けばこんな――!」
 虚ろな微笑みさえ浮かべなくなったレイは、壊れた機械のようにただ同じ言葉を繰り返す。
「アンジェ……?」
「この……!!」
 博士はレイを蹴った。
「この役立たずが!!」
 罵りながら無抵抗なレイに暴行を加える博士の表情はいつもと違った。
 何かに追われているような、ひどく怯えた苦しげな表情。
「お前さえ完成すれば私は――」
 続く言葉は誰にも届かない。

 コノ クルシミ カラ カイホウ サレルノニ

「アンジェを連れて来い。レイの目の前で奴を殺す」
 研究室の冷たい床に横たわったまま、レイはうわ言のようにアンジェの名前を呟きつづけた。それは博士に対するレイの最後の抵抗だった。
「……ジェ……アン、ジェ……」
 その名前を持つ人の姿も、その人が自分にとってどんな存在かも。
 その人との思い出も、それが人の名前である事さえ、もう思い出す事が出来ないのに。