FAKE‐LAKE

 セティはその足で宿屋に向かった。教授に会う約束をしている。
 十年ぶりに会う教授は白髪が増え、アンジェを心配して気をもんでいるせいかやつれて見えた。
「お久しぶりです、教授」
「君には迷惑をかけてばかりですまない、セトナ」
 差し出された手を握り、教授はセティをまじまじと見た。
 こんなに痩せていただろうか。顔色も悪い。教授は心配そうに尋ねた。
「大丈夫か、体調が悪そうだが」
「はい、大丈夫です。独り者なものですから食生活が悪いだけで」
 セティは明るく笑い、話を流した。今は自分の体を心配している場合じゃない。
「それより教授、先日お話した件ですが」
「ああ。レイとアンジェを助け出す計画だな」
「それもそうですが、例の写真の事で」
 そうだった、と教授は頷いた。
「私も知っている人間だといいが」
 セティは思い出して描いた写真の人物像を見せながら説明する。
 一人は、髪は短いが多分女性だ。そして隣の男性は恐らく博士。かなり若い頃だろう。しかし、博士が結婚していると聞いた事がない。確か独り者だと聞いた。
 でも写真の中で二人は仲睦まじく寄り添い、間に小さな男の子がいる。
「博士の家族かと思いましたがどうも違うようなのです。ですから誰か知り合いなのかそれとも……」
 ふとセティは言葉を止めた。
「……教授?」
 教授は口元に拳を当てて、深く考え込んでいる。その表情は何かに気づいたようだった。
「セトナ」
 顔を上げ、緊張した表情のセティをまっすぐに見て教授は話し出す。
「これは憶測に過ぎないが、もしかしたら博士は――」