FAKE‐LAKE

「明日には何もかも忘れる。アンジェの事も、今日話した事も全部」
「お、お前の言、いなりになんか……っ、なるもんかっ……」
 なおも抵抗するレイを冷ややかに見つめ、博士は部屋を出て行った。
 夢見ていた故郷の、真実の姿。自分の出生に関する悲しい事実。
 それは、レイにとって虐待されるよりも苦しくて。
「……嘘だああぁ――っっ!!」
 電気を消された窓のない暗い部屋に、レイの絶叫が響いた。
『湖の国』と信じていたのは、ただの偽物。子どもの僕が思い込んでいただけの幻。
 研究室で作り出された“人工生命体”の僕には、最初から故郷なんか無かったんだ。


「う、ああ、ああぁ――っ……!!」
 薬が回りはじめ、割れるような頭痛がレイを襲った。
 頭の中を掻き回されるような激しい痛み。言葉が、記憶が零れ落ちていくような感覚に恐怖がつのる。
 アンジェ。
 アンジェお願いだ、助けて――
 体と心の耐えられない痛みにもがきながら、レイは忘れたくない兄の名前を呼び続けた。