FAKE‐LAKE

『……に、いて』

鞄のふたを閉め、部屋を出ようとしたシアナは突然立ち止まった。

『そばに……いて』

レイの声と息子の声がかぶって耳に響く。

「仕事、なんだ」

シアナは自分に言い聞かせるように呟いた。

あの時、誰かを助けようとするなんて驕りに過ぎないと思い知ったはずだろう?

助けたいと思うなんて、所詮――

心の声とは裏腹に、シアナは部屋へ戻り痛み止めの瓶を掴んだ。

飲ませやすいように液体にし、手の平に隠せるほどの小瓶に入れる。

それを鞄ではなく胸ポケットに入れ、シアナは部屋を出た。