FAKE‐LAKE

「おい、坊主生きてるか」
 レイはゆっくりと目を開け、アツキの方を見た。兵とは違う見慣れない服装の彼をぼんやりと見つめている。
 アツキは今すぐ盗みだそうとしたが、思い止まった。セティの言葉を思い出したからだ。
『下手に動くと彼もリアレスクの患者も殺されてしまうんだ』
 アツキは近くに寄って小声で話しかける。
「待ってろ、必ず助けだしてやるからな。今すぐは無理だが必ず、必ず助けてやる。もう少しの辛抱だからな」
 レイはゆっくりまばたきをし、微笑んだ。力無いその笑みは、まるで自分の死を覚悟しているようで。
 不安になったアツキは、思わず手を伸ばして鉄格子の向こうに居るレイの頬に触れた。
「……なるべく早く来る。だからそれまで頑張って生きろよ」
 拷問を受けて死んだ兄とレイの姿が重なり、アツキは涙声になった。
 優しく頭を撫で、もう一度約束する。
「必ず助けに来るから、生きててくれ」
 目の前にいるこの人は一体誰なのか、敵か味方か、本当に信じられる人なのか。今のレイにとってそんな事はどうでもよかった。温かい手の温もりと、例え嘘でも助けたいと言ってくれた事が嬉しくてレイは微かに頷いた。
 アツキは立ち上がる。そうと決まればぐずぐずはしていられない。早くセティに詳しい話を聞かなければ。
「……あ、の……」
 何か言おうとするレイに気づき、アツキはしゃがみ込む。
「なんだ」
 レイは力を振り絞り、掠れた声で途切れ途切れに言った。
「お願い……アンジェ、に、伝えて……」