FAKE‐LAKE

 それから一時間もしない内に、アツキはF基地内に忍び込んでいた。
 元々使われていない事になっている場所だ。見張りの兵もおらず、ひっそりと暗闇に包まれている。
 アツキの想像通りど偉いセキュリティが設置されていたが、ほぼ機能していなかったので苦労せず中に入れた。
 建物内に人の気配が感じられない。どこに少年が監禁されているのだろう。
 足音を立てずに進むうち、立入禁止と書かれた扉を見つけた。
 カードか何かで認証された人だけが入れるらしい。そこだけは別個のセキュリティが稼動しているようだった。とりあえず無難な所から探して行くかと歩を進めるうち、突然どこからか声が聞こえてきた。
 慌てて近くの通路に姿を隠す。耳を澄ませて方向を確かめる。
 男の声。そして呻き声。右の通路、二つ先の扉からだ。
「うっ……うぅ、っ……」
「従うと誓えば楽にしてやるぞ」
「いっ……、や……っ、……」
「強情な奴め!」
 激しい殴打の音。呻き声が次第に聞こえなくなる。
 アツキは拳を固く握った。飛び出して行きたいのをぐっと我慢する。今出て行っても勝算は無い。
 しばらくして足音が聞こえ、扉が開く音がした。