FAKE‐LAKE

「何だよ、それ」
 アツキは思わず口を挟んだ。頭の中で情報が錯綜して、混乱してきた。
「セティ、あんたF基地で一体何をやってるんだ?」
 目をあげたセティは、答えを濁すように尋ねる。
「引き受けてくれるか?」
「俺の質問に答えろよ」
 問い詰めるようにアツキは言う。一瞬迷うようにセティの視線が泳いだ。
「……潜入捜査だ。いや、潜入捜査も俺の本当の目的じゃない。今の目的は仕事よりも二人を助け出す事だ」
 セティは俯き、悔しそうに呟く。
「今頃、どんな目に遭わされているか……」
 アツキの脳裏に兄の姿が過ぎった。あの、兄の無惨な姿が。
「頼む。手を貸してくれ」
 沈黙が訪れた。冷たい風が窓をカタカタ叩いた。
「……セティ」
 実際より長く感じる重たい沈黙を破り、アツキは言った。
「少し、考えさせてくれないか」
 兄と同じ目に遭っているだろう少年を助けたい。でもやっとの思いで決意した事をすぐには変えられない。アツキの黒い瞳に葛藤が浮かんでいた。