FAKE‐LAKE

 普段なら気にならない妹達の笑い声にさえ苛立つ。
 そんな自分が嫌になり、ニールは家を出た。あてもなくふらふらと街を歩く。
『おはようニール』
 ふいに声が聞こえて振り向く。そこには誰もいなかった。
 胸が苦しい。
 傷ついたとか、腹がたつとかじゃない。
 ただ、素直に信じていた世界が崩れて。目の前の出来事全てが嘘っぽく見えて来て。
 初めて、人を信じる事が怖いと感じた。
「ニール」
 ぽん、と肩を叩かれて我に帰る。
「親方」
 ニールは慌てて目を擦った。元気そうな声で挨拶する。
「お疲れ様です。営業の帰りですか?」
 アルクはニールの作り笑いを見て、何かを感じとったようだ。
「ニール、少し歩かないか」
 いつもの優しい表情に、涙を隠せなくなる。ニールは俯いた。アルクはニールの肩を引き寄せてゆっくり歩きはじめた。
「……親方」
「なんだい」
 ニールはぽつりと呟く。
「人間て面倒な生き物ですね」
 アルクは黙って話の続きを待った。きっと例の仕事の件で何かあったのだろう。
「騙したり騙されたり。言ってる事と本当の事が違ったり。傷ついたり傷つけたり」
 はは、と力無く笑い、ニールは涙を拭った。
「目に見えてる物が全て真実じゃないとか、嘘っぽい事が真実だとか」
 アルクは近くの河原へと足を向ける。ニールが小さい頃よく遊んだ場所だ。
「……なんだか、分からなくなりました。人を信じていいのか、何を信じたらいいのか」