FAKE‐LAKE

「この仕事さえ終われば元に戻る。心配するな、美人が台なしだぞ」
 むっすりと睨んでいるリーナの頬をつまみ、セティは茶化すように笑った。
「辞めて」
 唐突にリーナは言う。彼女の中で今まで我慢していた何かが切れた。
「今すぐ辞めて。そんな仕事」
「リーナ」
「辞めて! すぐ辞めて!」
 ボロボロと涙をこぼしながらリーナは叫ぶ。
「叔父さんのバカ!!」
 セティはふいに飛び込んできたリーナをよろけながら受け止めた。
「毎日毎日、叔父さんに何かあったらどうしようって心配する身にもなってよ!」
 泣きじゃくるリーナをセティはぎゅっと抱きしめる。
「もう、嫌だよ……」
 セティは行き先も言わず仕事内容も一切話さない。いつも笑って見送っていたリーナも陰で不安と戦っていたのだ。
「……ごめんな」
 セティはリーナの背中をぽんぽんと宥めるように叩く。
「でも、リーナが俺の事を心配してくれるように、俺も自分の“患者”が心配なんだ」
 ぱっとリーナは顔を上げた。睨んでいる彼女にセティは微笑みかけて続ける。
「頑固な親父でごめんな」
 リーナは手の甲で涙を拭い、首を振った。仕方ない。男の人にとって仕事とはそういう物なんだろう。
「その、叔父さんの頑固さが良いんだって母さんが言ってた。私には全っ然わからないけど」
 きっぱりと言われてセティは苦笑いし、もう一度リーナを抱きしめた。
「仕事は、いいよ。でもせめて何か食べて」
「分かった」
 セティは頷き、思い出したように言った。
「リーナ、あれ作れるか? お前の母さんが得意だった」
「ああ、あれ?」