FAKE‐LAKE

 雷に打たれたかのように、シアナはその場に固まった。
『父さん、そばにいて』
 耳元で声がしたような気がするほど、鮮明に昔の事を思い出す。
『お薬も、何も要らない。苦しいのも我慢するから、お願いそばにいて』
 原因不明の病気に苦しんでいた息子の手は、しっかりと自分の服を掴んでいた――
 ふっと、レイは手を離した。朦朧とした状態でアンジェだと思ったのがシアナだと気づいたからだ。
 当惑しているシアナを睨み、レイは両手を背中で交差させる。
「縛んな、よ、早く」
 そして目をつぶった。涙が一筋、傷だらけの頬を伝う。
「……ごめんな」
 思わず謝っていた。仕事と割り切っていたはずなのに、とシアナは自分の無意識な行動に動揺する。
 重たい手枷を手に取り、無抵抗なレイの手首に嵌めた。右手、左手。擦れて潰れた水膨れの跡が痛々しかった。
「また、診察に来る」
 立ち上がって声をかけるシアナに、レイは目をつぶったまま何も答えなかった。