FAKE‐LAKE

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カツカツと人が入ってくる。音からして多分二人。

目隠しを外された。きつく縛られていたせいですぐには焦点が合わない。ゆっくり周りを見回す。

冷たい灰色の壁。鉄格子の向こう側にある重たい扉。両手は後ろで重たい枷を嵌められており、両足には見慣れた鎖。鉄の首環は飼い犬のように床に打ち付けられた杭と鎖で繋がれていて、扉に近づけないようになっている。

レイは逃げ出したあの部屋――F基地内の牢獄――に連れ戻されていた。

「何故脱走した」

博士は床に座っているレイを冷たい目で見下ろす。

わかるもんか、お前になんか。

黙っているレイの肩を、博士の横にいる兵が足で小突いた。

「答えろ」

怒りを浮かべた黄緑色の瞳が博士を睨みつける。レイは低い声で答えた。

「……人間になりたかったから」

「何?」

「“人”でいたかったからさ! あんたたちの“道具”じゃなくて、僕は“自分”でいたかったんだ!」

間髪いれず兵に顔を蹴られる。ひどく切れた唇から赤い血がぼたぼたと白い服にこぼれ落ちた。

「……生意気な」

レイを床に蹴り倒し、兵は吐き捨てるように言った。

「化け物め、お前に生き方を選ぶ自由なんてないんだ! 人に使われるだけありがたいと思え!」