FAKE‐LAKE

「どう?」
 レイがずっと黙っているので、アンジェは不安になってきた。
 屋根裏は嫌だったのかな。元々ベッドとか置いてあったから、屋根裏とはいえちゃんとした部屋みたいなんだけど。
 レイはしばらく無言で部屋を眺めていたが、ふとアンジェの方を向きぽつりと尋ねた。
「いい、の?」
「え?」
 レイの言葉の意味を理解できず、アンジェは聞き返す。
「僕、ずっとここ、居ていい、の?」
 彼のどこか戸惑っているような表情の理由が分かり、アンジェはほっとして頷いた。
「レイがここでいいのなら」
 レイがどこか他へ行きたいのなら引き止めはしない。でも行く場所がないのなら、ここに居ればいい。
 そう思い、アンジェは決定をレイに任せた。
 レイはアイビーの鉢をそっと両手で包んだ。緑色の可愛らしい葉をそっと指で撫でる。天窓を見上げて流れる雲を眺め、床に膝をついて敷かれた布に手を触れる。
 オリーブグリーンの布の上に、ぽた、と光るものが落ちた。
「……ありがとう」
 ごしごしと目をこすり、レイは笑顔でアンジェに言った。
「ありがとう、アンジェ」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


 身を隠す場所が出来て安心したのか、レイは物音に怯えなくなってきた。行動範囲も少しずつ広がり、一ヶ月が過ぎる頃には外にも出られるようになった。
 日中は、字が読めないにも関わらずアンジェの部屋で本をひたすら眺め、夜にはアンジェに本を読んでもらって言葉を覚えた。