FAKE‐LAKE

「あ、ニール」
 受付に座っていた所長の奥さんのマーリャがニールを手招きした。
「どうしたんすか、所長がおれの事怒ってるって」
 少し間を置いて、マーリャはニールに確認するように尋ねる。
「あなた、アルクに隠し事してない?」
「隠し事? それどういう意味?」
 全然分かっていないニールが聞き返すと、マーリャは奥の部屋を指差して答えた。
「いま、坊ちゃんの依頼人が来てるの」
 坊ちゃん、と聞いてニールの表情が変わった。親方の忠告を無視してアンジェと友達になった事を怒っているのか。
「やっぱり、あなた坊ちゃんと親しくしてたのね」
 そう言うマーリャの口調は優しかった。
「いいの。あなたならそうすると思ったし、アルクも気づいてて言わなかったと思う」
 視線を落とすニールにマーリャは続ける。
「アルクが怒ってるのは、あなたじゃなく依頼人に対してよ。坊ちゃんの所へ行くのが危険になったのにニールに配達をお願いするから」
 危険? ニールの顔に緊張が走った。