FAKE‐LAKE

「う……うう……」
 薄暗い牢の中、苦痛に呻く少年の声は次第に小さくなっていく。
 しばらくして、兵は限界を超えた痛みに意識を失いかけているレイを足で小突いた。うう、と虚ろな声がもれる。
「博士は二週間後から研究に入るそうだ。大人しく言うとおりにすれば、こんな目に合わずに済むぞ」
 脅すようなその言葉に、レイは黄緑色の瞳を見開き、ぎらりと兵を睨んだ。彼の意志は変わらない。
『あんたの言いなりになんかならない』
 博士にそう宣言した。ここに戻るしかなかった以上、僕に出来るのは最期まで抵抗すること。そう決めたんだ。
 ガツ、と顔を踏まれる。頬が切れた。
「博士の命令に逆らうとどうなるか、もっと知りたいのか」
 兵は硬い靴先でレイの腹を蹴りつけた。息が出来ない。さらに蹴られる。
 くく、と残酷な笑い声が上から落ちてきた。レイの顔が苦痛で歪むのを楽しんでいるかのように。
 もう、死ぬかもしれない。何度も繰り返し蹴られ、げふ、とレイは咳込んだ。苦しそうに息をする傷だらけの口から溢れた物に血が混じった。
 その様子を見て、やっと兵は蹴るのを止めた。
「分かったら従え」
 そう吐き捨てて兵は出ていく。
「ぐ……げほっ……」
このまま、死ぬのかも。動けなくなったレイは自身に囁いた。
 死は、そう遠くない。博士に抵抗する限り。
 それでも僕は最期まで“人”でありたい。誰かを殺める“兵器”にはなりたくないんだ。
 ぼんやりとした意識の中、レイはアンジェを思い出した。
 どうか、アンジェが捕まりませんように。無事でいますように。
 祈るような気持ちで願い、レイはゆっくり目を閉じた。