FAKE‐LAKE

 痛みに呻くレイを見下ろして博士は笑った。そして兵に命令する。
「Rに脱走した罰を」
「はっ」
「ただし絶対に殺すな。反抗的だが貴重な実験体だ」
 出て行こうとする博士の背中に向かってレイは叫んだ。
「僕は、絶対にあんたの言いなりになんかならない! 僕は」
 博士はゆっくりとレイを振り返った。鋭い目に怒りがちらついている。
「あんたの“道具(どうぐ)”じゃなくて、最期まで“人間”として生きるんだ!!」
 張り詰めた空気の中、レイと博士の視線がぶつかった。
 真っすぐなレイの目。どんなに踏み付けても揺らがない強い意志を感じさせる瞳。
 博士の目が苛立ちと共に残酷な色を浮かべた。
「まずは躾からだな」
 博士はレイを顎で差し、兵に言った。
「減らず口をきけなくなるまで可愛がってやれ。自分の立場が分かっていないようだ」
「はっ」
 兵は手にしていた鞭を構える。
「レイ」
 博士は口許だけでいやらしく笑った。負けるもんかとレイは睨み返す。
「お前が一体どこまで耐えられるのか、楽しみだ」
 兵は一礼して博士を見送る。ガシャンと重たい音をたてて扉が閉まった。


――“罰”と称した虐待が始まる。


「あう……うぅ、……っあぁ、……!!」
 恐ろしい鞭の音に、苦痛に満ちた呻き声が重なる。繰り返される罵倒と少年の悲鳴。
 兵が怒りに任せてレイを虐待する様子を背後に聞きながら、博士は満足そうにくすりと笑った。
「鬱憤の溜まった兵には良い餌だ」
 振り向いて扉を見つめる博士の目は、人とは思えないほど冷たい。
「“実験体”のくせに人と同じ自由を求めたりするからだ」