FAKE‐LAKE

「まさか……」
 慌てて二階に駆け上がる。アンジェはまっすぐ屋根裏部屋に飛び込んだ。
「レイ!」
 いつものようにきちんと整ったベッド。枕元にある読みかけの本。部屋が荒らされた様子はない。
 名前を呼びながら自分の部屋に下りた時、アンジェはたんすが開きっぱなしになっている事に気づいた。
 小さくなった服をしまいこんでいた引き出しから上着が無くなっている。
 もしかして、レイは外に出た……?
 アンジェは青くなった。まさか、あの薬は。
「レイ!」
 外に出て大声で叫ぶ。時々心臓が苦しくなるのも気にせず、アンジェは何度もレイの名前を呼んだ。
「レイ! どこだよ!」
 ざわざわと風が木々を揺らす音だけが大きく聞こえる。
 足に何か柔らかい物が当たり、アンジェは振り返った。手探りでそれを拾う。
 上着と一緒にしまってあったはずの、帽子。
「……レ――イ……!!」
 もう届かないその叫び声を無情に飲み込む風の音。


 しばらくして、重たい足を引きずるように家に戻るアンジェを、二人の兵が遠くから見張っていた。