FAKE‐LAKE

 ――レイと出会ってから、約一週間。
 体の傷もよくなりはじめ、会話も大分通じるようになってきた。
 何があったのか、どこから来たのか。レイは話そうとしなかったし、アンジェもあえて聞こうとしなかった。
 片言で話すレイの言いたい事を理解するのに必死だったし、何となく聞いてはいけないような気がしたから。
 何があったかわからないものの、相当酷い扱いを受けていただろう事は傷痕や行動から察せられた。
 最初のうち、レイは風の音にも怯えていた。特に夜は、カタリと何か小さな音がするたびに毛布に潜り込み隠れようとした。
 眠りも浅く、何度も起き上がっては周りを見回し、手首に触れては“何か”を確認していた。

 人に会わせない方がいいかも知れない。
 アンジェがその事を確信したのは、ニールが配達に来てくれた時だった。
 ニールの声がした途端、レイは窓から逃げようとした。二階の窓から落ちる寸前にアンジェが慌てて止め、なだめすかして屋根裏に隠れさせその場を乗り切った。
「人、怖い」
 アンジェの服にしっかりとしがみついて震えるレイ。
 彼は、深い傷を体だけでなく心にも負っているのかも知れない。
 そう思った時、アンジェは閃いた。
 そうだ。隠れ場を作ってあげればいいんだ。
 ここにはニールと医師しか来ない。他の人は来たことがない。二人から隠れさえすればいいのだ。もし誰かから逃げていたり追われたりしているのなら、ここより良い隠れ場はないだろう。
 そして出来上がったのが、この屋根裏部屋だった。