「どこに行ってた」
薄暗い廊下を俯いて歩いていたセティが顔をあげると、部屋の前に腕組みしたアツキが立っていた。
「仕事だ」
気を張っていたので疲れた。今はアツキをかまう余力もない。それに、二人を助けるにはどうしたらいいかを早く考えたい。手遅れにならないうちに何とかしなければ。
セティはアツキの横をすり抜けて部屋に入ろうとした。
「待てよ」
ぐい、と肩を掴まれる。振り向くのも面倒だ。
「悪いが忙しい。リーナにかまってもらえ」
無愛想に言うセティの胸倉に掴み掛かり、アツキは同じ問いを繰り返した。
「答えろよ。どこに行ってた」
一体何だと言うのだ。セティは怪訝そうにアツキを見る。
答えはすぐに分かった。
小刻みに肩が震えている、彼の黒い瞳に深い怒りが浮かんでいたから。
「……お前、尾行たな」
「んな事どうだっていい!」
怒鳴るな、とセティは顔をしかめた。アツキの手を乱暴に振り払い、短く答える。
「お前が見た通りだ。満足か」
ガツ、と鈍い音がしてセティはよろめいた。そのまま壁に叩きつけられる。
初めてアツキはセティを殴った。思わず手が出ていた。止められなかった。信じていた兄に裏切られたような気がして。
「あんた……あそこがどんな場所か知ってんのか?」
ふぅと息をつき、セティは唇の血を拭う。アツキがなぜ殴るのか分かっている。
あそこ――F基地は。
「……政権交代時に完全閉鎖された悪名高い軍の機密基地。違うか?」
「分かってて行ってんのかよ! 国の平和を守るって大義名分のもと、無実の人間が何人あそこで犠牲になったか」
「少なくとも」
セティは淡々と返事をする。
「お前よりは分かってるはずだが?」
薄暗い廊下を俯いて歩いていたセティが顔をあげると、部屋の前に腕組みしたアツキが立っていた。
「仕事だ」
気を張っていたので疲れた。今はアツキをかまう余力もない。それに、二人を助けるにはどうしたらいいかを早く考えたい。手遅れにならないうちに何とかしなければ。
セティはアツキの横をすり抜けて部屋に入ろうとした。
「待てよ」
ぐい、と肩を掴まれる。振り向くのも面倒だ。
「悪いが忙しい。リーナにかまってもらえ」
無愛想に言うセティの胸倉に掴み掛かり、アツキは同じ問いを繰り返した。
「答えろよ。どこに行ってた」
一体何だと言うのだ。セティは怪訝そうにアツキを見る。
答えはすぐに分かった。
小刻みに肩が震えている、彼の黒い瞳に深い怒りが浮かんでいたから。
「……お前、尾行たな」
「んな事どうだっていい!」
怒鳴るな、とセティは顔をしかめた。アツキの手を乱暴に振り払い、短く答える。
「お前が見た通りだ。満足か」
ガツ、と鈍い音がしてセティはよろめいた。そのまま壁に叩きつけられる。
初めてアツキはセティを殴った。思わず手が出ていた。止められなかった。信じていた兄に裏切られたような気がして。
「あんた……あそこがどんな場所か知ってんのか?」
ふぅと息をつき、セティは唇の血を拭う。アツキがなぜ殴るのか分かっている。
あそこ――F基地は。
「……政権交代時に完全閉鎖された悪名高い軍の機密基地。違うか?」
「分かってて行ってんのかよ! 国の平和を守るって大義名分のもと、無実の人間が何人あそこで犠牲になったか」
「少なくとも」
セティは淡々と返事をする。
「お前よりは分かってるはずだが?」



