FAKE‐LAKE

「君には分かっているんだろう? 奴が……AからRまでの人間兵器が何に使われるために研究されたのか」
 逆に問い掛けられ、セティは戸惑いがちに答える。
「確信はないのですが……恐らく暗殺用の兵器かと」
「その通り。さすがだな」
 満足そうに頷く博士の笑みに、淀んだ底無し沼を思わせる不気味な色が浮かんだ。
「今のロスタナは平和に見えるが、この国の資源欲しさに隙を狙っている国は沢山ある。過去によく狙われたものだ」
 確かに、とセティは相槌をうつ。
「国を守るため、戦争になる前に相手国に送り込んで一働きさせる……まあ、隣国に柔軟な政策を執る今の政府に聞かせたら眉をひそめそうだがな」
「……なるほど」
「邪魔者を消したい野心家に使わせてもよし。欲しがる国に奴隷として売り払ってもよし。どちらにしろ使い道はいろいろだ」
 同調したふりをして頷いているセティは、博士の歪んだ笑みの後ろ、本棚の隅に日焼けして色褪せた写真を見つけた。
「いつまでに仮説をまとめておけばよいでしょうか」
 その写真に写る人物を記憶に留め、メモとファイルを鞄にしまいながらセティは尋ねる。
「急ぐ必要はない。半月後でも構わないさ」
「わかりました。やれるだけやってみます」
 深く頭を下げて部屋を出ていくセティの姿に、博士は呟く。
「セトナはロジェに似ているな」
 ロジェ・ウェッジウッド。真面目で優秀だった、かつての助手。
 そして裏切り者になった人物。
「上手く行けば、奴も見つけられるかもしれん」
 くっと自嘲するように笑い、博士は立ち上がった。