FAKE‐LAKE

「はい」
「セトナ君か。なかなか連絡が無かったが、計画はその後どうなっている」
 重々しい口調で話す年配の男性。国家警察の長官だ。
 セティは際限なくこみ上げてくる溜息を飲み込み、話し出した。とりあえず今は手探りで前へ進むしかない。
「捕獲はまだですがRが見つかったとの事です。明日打ち合わせに行きます」
「そうか、いよいよだな」
「はい」
 心なしか嬉しそうな声にセティは小さな声で答える。
「これでウィリス・フロストの違法な研究を止めさせられる。最後まで頼むぞ、セトナ君。国の安全がかかっているのだからな」
 はい、と答える度に頭が痛くなった。こめかみを押さえて目をつぶる。
「状況がセッティングされしだい連絡してくれ。こちらも踏み込む準備をしておく必要がある」
「はい……」
 つい疲れた色を滲ませたセティの返事に、上官は声を和らげた。
「君は本当によくやってくれた。今回は適当な人材がいないため医師であり研究者でもある君にお願いしたが、潜入捜査が初めてにしては上出来だ。感謝している」
「ありがとうございます」
「博士を逮捕してしまえば君は任務完了だ。後始末は我々が引き受ける」
 “後始末”。その上官の言葉にセティは不安を感じた。
「博士を逮捕出来た暁には、Rは無事解放されるのですよね」
 もしアンジェも博士に捕まればレイと同じ扱いを受けるはず。そう思い、セティは確認するように尋ねた。
「なにを言ってるんだ」
 途端に上官の口調が変わる。
「あれは人間ではない。奴らが作った兵器だ。証拠として使った後は処分する」
「そんな、彼等は何も」
「君は」
 思わず声が大きくなったセティの言葉を上官は厳しい言葉でさえぎった。
「国民の不安要素にもなる物を放置しておけと言うのかね」