FAKE‐LAKE

「早く元気になりなよ」
 細い肩に毛布をかけてあげながら、アンジェは励ますように声をかける。
 少年は目に涙を溜めたままアンジェを見上げた。
「感謝、あなた」
「感謝……僕に?」
 手の甲で涙を拭い、こくんと少年は大きく頷く。
「それね、“ありがとう”って言うんだよ」
 少年は一語ずつ記憶するように、教えられた言葉をゆっくり繰り返す。
「あ、り、が、とう、……え、と」
 少し首を傾げて再びアンジェを見上げる。
 彼が何を聞きたいのかを察し、アンジェは隣に座って答えた。
「アンジェ。君は?」
 少し間を置いて少年は答える。
「レイ」
「レイ、ね。よろしくレイ」
 少年は嬉しそうに頷いた後、今度はさっきよりはっきりした発音で言った。
「ありが、とう、アンジェ」
 初めて笑顔を見せた少年に、アンジェは同じように微笑みかえした。