FAKE‐LAKE

微かに口端を上げた彼の答えが気に障ったのだろう博士が何か言おうとするのを、彼は穏やかな声で遮った。

「“R”が脱走した日の風向きをご存知ですか」

「風……?」

「仮に水死したとしても、湖に沈んでいるのでないならどこかに流れついているはず。あの日吹いていたのは強い北風。ロスタナから見てリアレスクの方向です」

ああ、と博士は小さく相槌をうつ。

「水死して流れ着いたのであれば必ず噂が流れるでしょう。あの容姿ですから」

そうでないという事は、と言って彼は言葉を止め、博士の反応を見た。

「しかし、もう半年も経っている。その間に違う国に逃げたという事も考えられるだろう」

博士のその言葉に、彼の瞳は冷ややかな笑みを浮かべた。