FAKE‐LAKE

「お腹、空いてるんだ?」
 アンジェが笑いながら聞くと、少年はちらと食事の方を見た。
 そのまま視線をアンジェに向ける。不信感たっぷりの、怯えた表情。
「もしかして、毒入りとか疑ってる?」
 頷かなかったものの、少年の目が肯定の返事をしていた。
 アンジェはまた、彼の体の傷を思い出す。
 今までどんな目に遭って来たんだろう。一体、少年はどこから来たんだろう。
 アンジェはスプーンを手にし、スープを一口飲んだ。そしてパンを一片。
 少年は少し表情を緩めてアンジェの様子を伺っている。
「美味しいよ?」
 笑顔で声をかけたが、ふいと目を逸らされた。
 アンジェは窓辺にあった砂時計を持って来てテーブルの上に置いた。
「これ見て」
 少年はわざと顔を背ける。見て、ともう一度言うと目だけをこちらに向けた。
「この砂が全部落ちても僕が死ななかったら、これに毒は入ってないよ」
 そう言ってアンジェはベッドの端に座り、再び絵を描きはじめた。
 大きめの砂時計は約五分を計れる。毒の有無を知るには短すぎるかも知れない。でも、空腹の少年を納得させるには十分だろう、とアンジェは考えた。
 初めのうちは横目で関心無さそうに見ていた少年も、二分が過ぎる頃から食いつくような目をして落ちていく緑色の砂を見つめている。
 さらり、と最後の砂が吸い込まれていった。