FAKE‐LAKE

「……俺、足洗ってまともになるから」
 ぼそぼそと言い、アツキは目をあげた。眼鏡の向こう、薄茶色の瞳が優しい。
「リーナの事、大事にするから」
「それで?」
「リーナとの仲、認めてください」
 深く頭を下げる。鼓動の音が聞こえてしまいそうな沈黙。
「……お前でよかった」
 セティの優しい声にアツキは顔をあげた。
「お前を、リーナの母親に見せてやりたかったな」
 そう言ってセティは歩きだす。資料を抱えた彼の背中は、やけに寂しそうに見えた。


 部屋についたセティは二つの資料を開き直し見比べた。
 “R”の資料と“糸屑”の検査結果。全く同じデータが並んでいる。
「これは偶然か、それとも必然か」
 一人呟く。
 アンジェはどこまで知っているのだろうか。“R”の事、そして自分の過去の事を。
「隠してるって事は、気付いてはいるのかもしれないな」
 次の診察日を確認する。
「何も起こらなければいいが……」
 糸屑の検査結果を見た時から嫌な予感がしていた。
 何かが――悪い事が起きそうな、そんな気がする。
 セティは厳しい目で“R”の資料を見つめた。