食堂に向かったアツキは、資料を脇に抱えたセティが出て来るのと鉢合わせした。
会おうとしていたはずなのに気まずくて、アツキは目を逸らす。
「アツキ」
先に口を開いたのはセティだった。
「お前、俺に何か言わなきゃいけない事ないか」
ああ、やっぱり怒っている。アツキは素直に頭を下げた。
「この間は……悪かったよ」
「この間?」
セティは怪訝そうに聞き返す。
「何の事だ」
「いや、だからこの間ひどい事言って」
ああ、とセティは軽く受け流し廊下の壁にもたれた。
「そうじゃなくて。もっと謝らなきゃいけない事あるだろ」
「え?」
アツキは首を捻った。思いあたる節がない。
セティは意味深にニヤリと笑った。
「確かに、金も食べ物も好きなように盗っていいと言った。でも」
アツキはまだ分かっていない。ぽかんとセティの顔を眺めている。
「可愛い姪の唇まで許した覚えはないぞ」
セティが落とした爆弾に、アツキは一気に真っ赤になった。
「なっ……な、ま、まさか」
「そうそのまさか」
うろたえるアツキを平然とした眼差しで見ながら、セティは棒読みで答える。
「仕事に疲れて部屋に戻ったら可愛い姪の唇は泥棒に奪われてるは腹は減るは見せ付けられるはで叔父さんはすっかり疲れてしまいましたとさ」
「黙って見てないで咳ばらい位しろよ!」
アツキは思わず怒鳴った。恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「で? 俺に言う事はないわけ?」
「あ、う」
湯気がでそうなほど赤いアツキの顔を見てセティは楽しそうに笑った。



