FAKE‐LAKE


 食堂のテーブルに座ったセティは、ふぅと息をついた。
 ドアを開けた瞬間に見た――いや、『見せられた』二人のキスシーン。
「……若いねぇ」
 ケースからRの資料を取り出す。今日分析が終わった、例の“糸屑”の資料も。
 窓の外を見つめ、セティは呟いた。
「……シェアラ、君の娘に恋人が出来たよ。時が流れるのは早いね」
 誰かに話し掛けるように。
「娘の幸せそうな姿、君に見せてやりたかったな」
 それに答える人は、もういない。
「いい奴だよ、アツキは。リーナをきっと幸せにするよ」
 いない。
「だから……」
 いない。いないんだ。
 いない いない いない――
「だから、安心していいよシェアラ」
 慣れたはずの寂しさ。なのに時々痛む傷痕。
「はは、二人にあてられたせいかな」
 セティは自嘲気味に笑い、資料に目を移す。眼鏡をかけているはずなのに、資料の文字がぼやけて見えた。