FAKE‐LAKE

 体のあちこちにある傷痕。鞭で打たれたような背中のみみず腫れ。傷も、木の枝に引っ掛かったとかいう次元のものではない。誰かが意図的に付けたと思われる深い傷が体中にあった。
 薬を塗って当て布をし、服を着せる。左腕をとった時、少年の二の腕に青い色で彫り込まれている“F”の文字が目に留まった。
 アンジェの手が、無意識に自分の左腕を押さえる。
「……ん……」
 瞼が動き、微かに声がした。気が付いたのかと思いアンジェが顔を覗き込むと、彼はうっすらと目を開けた。
「あの、わかりますか」
 焦点の合わない黄緑色の瞳がぼんやりとアンジェを見つめている。
 こんな時、何を、どう言ったら良いのだろう。
 アンジェが言葉を探しているうちに、少年は再び目を閉じた。

 アンジェの新しい服は少年には大きすぎた。襟もとは肩が出そうな程広く開き、袖口からは指先が出ない。
 ぶかぶかの服を着せられた少年を、アンジェは自分のベッドに寝かせ温かい毛布で包んだ。心なしか、頬に赤みがさしてきたように見える。乾いてきた水色の髪が、ふわふわと枕の上でカールしていた。
 ――まるでお伽話に出てきそうな子だな。
 自身の中でそう呟きつつ、アンジェは熱が無いか確かめようと少年の額に手を当てた。ぴく、と瞼が動き、少年は目を開けた。
「具合は、どう?」
 ぼんやりと周りを見回している彼の瞳がアンジェの姿をとらえる。
 途端に少年は目を見開き、アンジェの手を払いのけて飛び起きた。