「ちーちゃん! ちーちゃん!!」

きみが呼ぶから。

「先生と呼びなさい、ばかもの」

そんな憎まれ口を、たたくしかなくて。
でも、きみは。

「バカってゆーなよ!!」

なんて、間の抜けた返事を返してくる。

きみの機嫌を損ねなくて、よかったと安堵するけど。
それをくちに出すことは、出来ない。

邪魔をするのは、年長者ゆえのプライド?
それとも。




「……ね、ちーちゃん。ちゅーしよ?」
「嫌だ」
「なんで?? 誰も見てないよ」

たしかに、ここは放課後の教室で。
いま、ふたりきり、なのだけど。

ちらりと、きみのくちびるに視線を向ける。

少し薄めで、それなのに熱くて柔らかい。
その感触は、知りすぎているくらい、知っている。

誘いは、魅力的。

「素直じゃないなぁ」
「……なにが」
「してほしいくせに」

言い当てられて、顔が熱くなる。

「言いなよ」

いっそ高慢に命じてくるきみの、腕を掴んで引き寄せて。

奪ったくちびるは、イチゴの味がした。



「学校に、菓子を持ってくるな」

「じゃあ、せんせーも、学校で生徒にちゅーしちゃ駄目だよ」

にやにや笑うきみのくちを、堪らず、もう一度ふさいだ。