私の部屋にある、木目のキャビネットのうえ。 そこには、大事なものを、いつだって目に入るように飾っていた。 満開の桜の木をバックに撮った私と誠司の写真。 誠司にもらった、私には不釣合いの高級ブランドのアクセサリー。 誠司との思い出が所狭しと並べられていた。 でも今は、寂しいくらいにスッキリと片付けられ、そこにあるものは、たったひとつのもの。 聡と再会した日にもらった深紅のベネチアングラス。 ただそれだけが、キャビネットのうえで、私を見つめていた。