「いいよ、別れよう」
涙を見せることも、考え直すように言うこともしない、あまりにも淡々とした別れ。
知らずのうちに私は、「それでいいの?」と無責任なことを口走る。
「いいも何も、しかたないだろ? もとの幼馴染に戻るだけだし。親には俺から言っておくから」
誠司のお母さんと、今日久しぶりに笑顔で会話をした。
妙な違和感を感じたけれど、もしかしたら良い関係を再構築できるんじゃないかと、一瞬だけ思った。
でも、私はそれを壊してしまった。
黙りこくった私を慰めるように、誠司は私の頭を優しく撫でながら語りかける。
「他の男を好きなヤツと結婚したって、俺は幸せになれないだろ?」
「……ごめん……、ごめんなさい……」