「――うん」
幼い頃からずっと一緒だった、幼馴染の誠司。
恋人関係を解消したら、私たちはきっと、幼馴染としても一緒にはいられない。
「――そっか……」
誠司は、別れを告げられても驚くほど冷静だった。
これ以上問い詰めることも、責めることもせず、寂しげな笑みを浮かべて私を真っ直ぐに見た。
「出張に行く前ぐらいかな。なんとなく気づいてはいたよ」
「……そう……なの?」
「心ここにあらずって感じだったもんな、依子」
言われてみればそうだ。
誠司が指摘したその期間、フィレンツェから帰国した私は聡のことばかり考えていた。


