月島家からの帰り道、私と誠司は沈みゆく夕日に目を細めながら歩いていた。


「これからどうする? 俺の所に来る?」


誠司に誘われて、それまで順調に歩いていた私の足がぴたりと止まる。


「――依子?」

「……誠司。あのね、私……、話があるの」

「話? それなら俺の部屋で……」


続きを聞かずに私は首を横に振る。


「……私、好きな人ができたの」

「……えっ?」


穏やかだった誠司の表情が、少しずつ歪み始める。


「好きな人?」