苦笑しながら誠司がそう言ったあと、旅行会社のお姉さんは、そのパンフレットをカウンターの隅へと追いやった。 カフェで語り合う、私と誠司の未来。 その話題を、私はすべて覚えていない。 ――……忘れなきゃ。忘れないといけない。 誠司との会話に花を咲かせる一方で、私は必死に自分に言い聞かせていた。 カフェを出たあと、私は誠司に送られて、一人暮らししているマンションに帰り着いた。 「ただいまー、ハナ」