誠司は何も言わないけれど、月島グループへの内定を出したのは、誠司のお父さんの独断だと私は思っている。

社長であるお母さんは、私の採用について何も関与していない。

それどころか、私が月島グループに入り込むことを反対したはずだ。


なぜなら、私と誠司のお母さんは決して仲が良いとは言えないから。

犬猿の仲、遠慮する仲、そのどちらにも当てはまらない。

お母さんにとって私は、空気のような存在だった。



「そういえば、お袋に会うのって高校のとき以来だな」

「……うん」


幼い頃は、誠司のお母さんも私に対する態度は優しかった。

でも、私と誠司が別れることなくずっと一緒にいるのを見て、次第にお母さんの態度は変わっていった。

それに気づいたのが高校に入学して間もない頃で、私はそれ以来、月島家を訪れることはなかった。