久しぶりに会えたとき、私は堰を切ったように誠司に話題を提供する。
それは誠司も同じで、私たちは幼い子供のように次から次へと喋り続けていた。
でも今日は、私は誠司と話すことはもちろん、顔をまともに見ることすらできずにいる。
「あのね、誠司……」
胸がズキズキと痛むのを感じながら、私は誠司に別れ話をするために姿勢を改めた。
「あ、そうだ。これから俺の家に来ないか?」
「……えっ……」
私がこれからする話を遮るようにして、誠司は一方的に誘い、ソファから腰を上げた。
「入社式の前に、お袋に挨拶しておいた方がいいぞー」
茶化すようにして笑う誠司は、シルバーのスーツケースを玄関に運び始め、もう外に出る準備をしていた。


