誠司が出張から戻ってくる日までのあいだ、聡は当たり前のように私に連絡をしてきた。
そして私も、当たり前のように聡に会いに行く。
誠司という恋人がいることを告げたのに、聡は後ろめたさを感じることなく、私への想いを切実に零した。
私は……――。
それに応えてしまったら最後だと、大袈裟に決めつけていた。
一度抱いてしまえば誰にでも靡(なび)く軽い女だと思われそうで、私が聡に対して真実を語ることはなかった。
心が離れてしまったとはいえ、私のいまの恋人は、誠司ただ一人なのだから。
「元気そうだな」
「うん。もうすっかり元通りだよ」
出張から戻ってきた誠司は、約束どおり、空港から私のマンションまで直行して来た。
誠司の仕事の都合で一週間ちかく会わないのはよくあることだった。


