「親が金持ちってヤツだよ。俺は普通の人だから」
「……そっか」
ちゃんと話してもらえると期待していたけれど、聡の素性はそこで終わってしまった。
バゲットが程よく焼けた頃、聡が作ったスクランブルエッグも食卓に並んだ。
レタス、トレビス、ベビーリーフ、トマトで簡単に作ったサラダとともに。
「いただきます」
「どうぞ。味の保障はないけど」
意地悪そうに笑うけれど、聡が作ってくれた簡単な朝食はとても美味しかった。
バゲットにバターを塗りながら、聡は口を開く。
「……俺だって、依子のことよく知らないんだけど?」
言われてみて、ハッとする。


