そのへんのスーパーで買って来たような食材じゃない。

色鮮やかな野菜は、フィレンツェの中央市場を思い出させる。

調味料にしても、その表示に日本語は見当たらない。


「ねぇ、聡」

「うん?」

「聡って、普段はなにをしているの?」


バゲットをオーブンに入れながら、私は疑問に思っていたことを率直に投げかける。


「カフェの店員」


聡はスクランブルエッグを作りながら、さらりと言う。


「だけど……」


この部屋。一端のカフェの店員とは思えない。

そう言いかけたけれど、私は無理やり呑み込み、聡が話してくれるまで待った。