「作ってもらうよりも、作ってあげる方が好きなんだよな」


楽しそうに言う聡が開けた冷蔵庫の中には、食材がぎっしりと詰められていた。


「すごい……。一人暮らしの男の人の冷蔵庫って、普通はこんなんじゃないよね」


感心しながら、誠司の部屋の冷蔵庫を思い出す。

誠司の部屋の冷蔵庫は、私が買い物してこない限り、いつも空っぽに近い状態になっている。

入っているのは、ミネラルウォーターのペットボトルぐらいだ。


「座って待ってて。すぐに出来るから」

「何か手伝うよ」

「じゃあ、そこにバゲットがあるから軽く焼いて」


なんだか、カフェの厨房にいるような気分だった。

キッチンに置かれた調理器具のすべてが、黒を基調にしたお洒落なステンレス製。

冷蔵庫の中もそう。