「あー、俺、そういうのパス」

「――えっ……?」


一瞬、耳を疑う。

昨日の今日で、手料理を振舞うことなんて図々しいにもほどがあると自分でも思った。

でも、聡がこんなにもあっさりと、そして冷たく断るなんて想像もしていなかったから、私は言葉を失ってしまった。


「あ、いや、そういう意味じゃなくてさ」


笑顔がスッと引いたまま、急に黙り込んだ私に、聡は慌てて言葉をかける。


「俺が作るって意味だよ」


気だるそうに寝そべっていた聡は勢いよく起き上がり、ベッドのそばにあったTシャツとズボンを着ると、まっすぐにキッチンへと向かった。

広々としたシステムキッチンの隅に置かれた、大きな冷蔵庫の前に立つ聡のそばに近づく。