聡のマンションを出たのは早朝のことだった。


『今日も会う約束をしているのだから、帰らなくていいだろう?』


朝日が差し込み始めたベッドルームで帰り支度をしていた私に、聡は寝起きの少し嗄(か)れた声で言った。


『二日続けて同じ服は嫌なの』


本当は聡の言うとおりにしたかったけれど、誠司に連絡しなければならない。

誠実な恋人はきっと心配して、昨晩は何度も私の携帯に連絡してきたはず。

どう言い訳をしよう。

出張先で仕事に忙殺されている誠司に、真実を話すには酷すぎる。


『着替えたらすぐに戻ってくるから』


今日はカフェの仕事が休みだという聡は、再びベッドのなかに潜り込んだ。