けれど、聡から視線を外し、頭上に広がる空をふと見上げると現実に引き戻される。


誠司がいるのに。

なにをこんなに浮かれているんだろう。

万が一、聡と親しくなったとしても、それ以上のことがあるわけがない。


――……ううん、あってはならないんだ。

長年一緒にいて、結婚の約束までしている誠司を裏切るなんて。



「……そろそろ帰ろうか」


帰り支度を始める私を見て、香織は少しだけ残念そうな顔をした。


「久しぶりの再会も、進展なしか」


私は、ただ笑うだけに留めて席を立った。