「ねぇ、どうするの? せっかく会えたんだから、なにか話でもしたら?」


オーダーしたケーキがまだ残っている状態で、私たちは聡がサービスしたシフォンケーキに手をつけていた。

聡はスマートな動きで店内を回り、涼しげな笑顔を振りまきながら働いている。


ドゥオーモで見たときとは違う笑顔。

私は、聡の姿を逐一、目で追っているのに気づく。


「ねぇ、依子ってば。聞いてる?」

「あっ、うん。でも仕事中だから、今日はやめとく」

「……だねー。まぁ、ここに来れば、いつでも会えるわけだし」


――いつでも会える。

それだけの、何気ない香織の一言に、胸の奥がじわりと熱くなる。