見つめあったのは、ほんの数秒。 聡は、そのまま厨房の奥へと消えて行った。 私たちにケーキを運んでくれた店員も、軽く頭を下げ、聡のあとを追うように厨房に入って行った。 「運命的な出会いじゃない」 香織はいまだ興奮が冷め切れていない様子で、茶化すようにして言う。 私はただ笑うだけで、聡がサービスしてくれたシフォンケーキを口に運んだ。