「……ドゥオーモの階段を一緒に上った人……」

「えぇっ!?」


素っ頓狂な声を上げた香織に、その場にいた客の視線が集中する。

香織は慌てて口を押さえ、あっという間に顔が真っ赤になる。


「すごい……、覚えているなんて」


ひどく感動したように、香織は溜息まじりに言葉をこぼした。


私が聡のことを覚えていたように、聡もまた、私のことを覚えてくれていた。

もう会えないんじゃないかと諦めていたのに、こんなに身近なところにいたなんて……。