誠実な恋人。 たった一人で海外旅行に行くような、自由奔放な彼。 私の頭のなかで絶えず浮かぶのは、いつだって後者だ。 幼い頃から、当たり前のように一緒にいる恋人ではなかった。 その日は、誠司と会う約束をしていない日だった。 朝からとても天気がよくて、どこかに出掛けるには持って来いの日。 それなのに、誠司は今日から一週間の出張。 私が見送りに行くと言うと、誠司は「ゆっくり寝てろよ」と、いつものように穏やかな声で言った。