落日

「ね、コーヒーの豆、変えた？」

「いや？　いつもと同じ豆だよ」


それなのに、今はなぜか、以前と違って苦く感じる。

首を傾げながらコーヒーを飲む私に、誠司は苦笑しながら言った。


「豆も挽き方も変わってないんだけどな。依子の気持ちの問題じゃない？」

「……飲む人の気持ちでコーヒーの味って変わるもの？」


半ば反抗的に訊いた私に、誠司は「さぁな」と無責任な言葉を返した。


「……なぁ、依子」

「なに？」