「依子、コーヒー飲む?」

「……あっ、うん。ありがとう」


――月島誠司。

父親同士が旧知の仲で、私と誠司は四つ年の離れた幼馴染でもあった。

香織たちも誠司のことは知っていて、私たちの関係を純粋にただの幼馴染だと思いこんでいた。


でも、実際は違う。

私と誠司は幼馴染であると同時に、将来を誓い合った仲だった。

正確に言えば、将来を誓い合ったのは私たちじゃない。父親同士だ。

自由な恋愛が許されるこの御時世、私と誠司は反抗すらしなかった。


そこにある理由は、たったひとつ。

知らずのうちに、お互いを必要としていたから。自然な流れで想い合うようになっていたから。